3.ゼネコン支配のまちづくりと市民運動 (平成30年8月)

  

第二京阪沿道の交野市星田北・星田駅北地区で土地区画整理事業の大規模な造成工事が昨年10月から始まっている。約45haの緑豊かだった農地がゼネコンの重機によって掘削土むき出しの工事現場に一変した。

 

星田北の約20haを大林組が、星田駅北の約25haを戸田建設が業務代行し、総事業費155億円、第二京阪沿道まちづくりとしては、大阪府下最大規模で、交野市黒田市政の命運がかかっている。

  

星田北12区画で稲作続行

 

交野市は平成27年『市長戦略』を発表、星田北エリアをイトーヨーカドーを中核店舗として「人が住みたい住みつづけたいコンパクトシティのリーディングゾーン」を形成するとして、市費30億円余を投ずることを決定した。

 

しかし、要となるイトーヨーカドーは平成28年に撤退、全敷地の70%が準工業地域に都市計画決定され、緑は失われ倉庫と排気ガスの街に変じようとしている。加えて、市民の生活道路「星田高田線」を廃道としたことが、市民の反発を大きく買うことになった。天下の公道を一部地権者とゼネコンの意向だけで廃道にできるものなのか。

 

 現在、全区画45haで造成工事が進められているように見えるが、実際は星田駅北地区だけで12区画もの農地と居宅で工事着工同意書と仮換地処分の同意が得られておらず、令和元年6月1日の仮換地確定後も、それらの区画で稲作が続いている。

 

つまり、不同意の区域を避けての工事決行で、土地区画整理事業としては、きわめて異例な状況下にある。地権者との交渉は袋小路に入ってしまった。しかし、それらのすべての責任は反対地権者の意向を無視して工事を強行する組合とゼネコン(戸田建設)、それに交野市行政当局にあるといわざるをえない。

 

コンパクトシティ変じて倉庫と排ガスのまち

 

交野市星田北地区とそれに隣接する枚方市茄子作・高田地区には広大な調整区域農地(約60ha)がひろがっているが、ここを東西に縦貫する第二京阪道路が開通することになり、乱開発を防止、計画的なまちづくりを目的として、平成20年に交野市星田北・高田まちづくり協議会(会長中井喜代治)と枚方市茄子作・高田地区まちづくり協議会(会長岡市敏治)が結成された。

 

平成22年には第二京阪道路が開通する。平成27年星田北・高田地区土地区画整理準備組合(理事長:中井喜代治、約20ha、地権者100名、業務代行者:大林組)が設立され、イトーヨーカドーを中核とするまちづくりが決定した。

 

平成28年には、同地区南に隣接する交野市星田駅北地区において、星田駅北土地区画整理準備組合(理事長:和久田泰弘、約25ha、地権者200名、業務代行者:戸田建設)が結成された。平成29年4月、交野市の両組合は共同で『東部大阪都市計画用途地域変更』とする都市計画案を、交野市、大阪府各都市計画審議会に提出した。

 

この計画案は次のような理不尽な問題点を多くかかえていた。

 

(1) 総面積の約7割が準工業地域で、倉庫のまちとなる。交野市が税金37億円を投じようとしている「コンパクトシティ」とは似ても似つかないまちづくりとなっている。
 
(2) 両組合総事業費155億円うち、53億円もの税金が投入されるのに、ゼネコンの倉庫優先で地域社会に排ガスと交通渋滞をもたらすのみ。
 
(3) 枚方市地区からJR学研都市線星田駅への通勤・通学路である市道星田高田線が「廃道」になる。(倉庫のじゃまになると言う理由で)
 
(4) 星田駅北東部のF、G地区(約1.5ha)は減歩率0%(駅北地区の平均減歩率40%)の計画となっている。この地区に駅北役員5名が土地の45%を保有しており、きわめて不公平である。
 
(5) 広大な緑の田園環境が不可逆的に失われて、一帯が準工業地帯となり、倉庫関連施設ばかりとなる。交野市の公約である「緑豊かな市」の理念に反する。

 

 

以上のような理不尽かつ不当な都市計画案であるため、反対する地権者、交野市民、高田・星田線道路整備推進協議会(会長:霜辻日出夫)は、交野市、大阪府の公聴会(平成29年8~9月)で反対意見の『公述』を行った。

 

さらに、同年12月には、交野市長、大阪府知事に意見書面を送付したが、いずれもかえりみられることなく、平成30年3月都市計画が確定し、同年8月には星田北、10月には星田駅北の土地区画整理組合が設立され、現在造成工事が進行中である。

 

平成30年4月、反対する地権者と交野市市民グループ、枚方市高田星田線道路整備推進協議会の三者が相寄って星田北エリアまちづくり再考連絡協議会(共同代表:奥間嘉隆、岡澤廣幸、岡市敏治)が結成された。

 

同連絡協議会は「星田高田線を生かしたまちづくり構想案」をまとめ、「農地減歩を17%減らせる農地集約案」を両組合に提示し、再考を促しているが、組合は話し合いに応じず、むしろ個別に地権者の切り崩しをはかっている。反対地権者への農耕妨害や家族への無言の圧力が感じられ、一部地権者は追い込まれた心理状態にあり、泥沼化の様相を呈してきた。

 

星田北は行政不服審査請求

 

そんな中で、星田北の複数の地権者から令和元年6 月27日大阪府知事宛『審査請求書』が提出された。これは行政不服審査法による申し立てである。審査請求人は星田北地区の巨大物流倉庫建設予定地内に農地を所有する者である。

 

当請求人は営農を希望していることから、土地区画整理事業による地価の上昇は関係がなく、重要な点は耕作面積であると訴えている。同請求書によれば、本事案は土地区画整理法の目的とする「健全な市街地の造成を図り、もって公共の福祉の増進に資する」とする法第1条に違反しており、仮換地処分に応ずることはできない、とするものである。

 

「公共の福祉の増進に反する」として次の事例をあげている。

 

(1) 星田高田線を一部廃道とすること。

星田高田線は枚方方面から星田駅へ通学・通勤する直線の一本道で、毎日1,000名以上が利用する近隣住民の主要な生活道路である。それを組合の総会の決議だけで廃道とするのは公共の福祉の増進に反する。

 

(2) 緑豊かな田園地帯である星田北地区を「倉庫のまち」に変えること。

 

(3) 交野市は巨大な市債残高を残し、大阪府下ワースト2位とされるほど財政状態が劣悪なのに、この事業に30億円余の市費を更に投入しようとしている。その投資は公共の福祉の増進とはなっておらず、また経済合理性もなく、市の財政をさらに悪化させ、将来世代の市民に負担を強いるものである。

 

(4) 公共の福祉の増進とならず憲法違反

大型物流倉庫の誘致は公共性と関係なく、交野市の平穏な環境が破壊されるだけであり、審査請求人への仮換地処分は公共の福祉のための財産権制限とはならない。憲法第29条の認める財産権に対する憲法違反である。

 

 

以上のように星田北組合の仮換地区処分を「違法」「違憲」としている。

 

大阪府および星田北の組合、業務代行者大林組の対応次第では訴訟となる。裁判となった場合、本事案は憲法判断を問うものであり、長期化する公算が高い。