2.JR学研都市線交野新駅誘致のまちづくり

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第二京阪国道とJR学研都市線に囲まれた大阪と京都の中間点、交野市東部地区でJR新駅誘致による魅力的なまちづくりが始まろうとしている。

 

1.第二京阪とJRに囲まれた交野市東部地区まちづくり

 

交野市東部の交野山(341m)の山麓にあり、第二京阪国道(二国と略す)とJR学研都市線に囲まれた寺・向井田、青山・神宮寺地区は西に開けた丘陵地帯で、広大で美しい調整区域農地がひろがっている。

 

平成22年ここに二国が開通し、隣接する交野北ICに乗ると、約20分で大阪・京都の各都心に到達する。車による移動は劇的に改善した。しかし、ここはJR河内磐船駅、津田駅それに京阪電鉄交野市駅へのいずれにも遠く、通学・通勤に不便で、環境がいいにもかかわらず、住宅地として魅力を欠いていた。

 

そこで、25年前の平成9年の交野市議会で、寺・向井田地区に交野新駅を誘致する決議が全会一致でまとまった。そして、官・民・産・学からなるJR学研都市線新駅設置推進協議会(会長:奥嘉隆)が設置された。

  

しかし、当時は営農継続を希望する地権者も多く、この計画を強力に推進していた北田輝雄市長が平成14年の市長選で落選したこともあって、このプランは凍結状態になった。

 

2.寺・向井田地区まちづくり検討会の設置

 

それから20年余が経過した。営農者は高齢化し、後継者もなく、営農継続が困難になってきた。そのような背景をうけて、令和4年3月の交野市議会では、JR交野新駅誘致まちづくりへの期待感が高まってきた。

 

これを受けて、同年10月、寺・向井田地区80名の地権者によって交野市寺・向井田地区まちづくり検討会(全13ha)が設立された。会長は岡市敏治、副会長は奥嘉隆、尾亀和馬である。交野市は概算測量やJR新駅誘致条件について、JR西日本の関連会社等に調査発注しており、その結果は令和6年3月に出る。

 

25年前のJR学研都市線新駅設置促進協議会の資料によると、新駅の新規乗降客1日3000人以上、さらに新駅舎は地元で建築等の条件が出されており、交野市長を先頭とする行政に加えて、地域社会、地元産業界の協力も必須である。

 

当時作成されたゾーン図(図1)によると、新駅を中心に全約60haのまちづくりが必要となる。したがって今般の寺・向井田地区13ha(地権者80名)はその第一工区となる。今後青山地区、JR東側の寺・神宮寺地区にも順次まちづくり組織の立ち上げが必要となってくる。

図1:JR交野新駅まちづくり構想図(平成12年)
図1:JR交野新駅まちづくり構想図(平成12年)

まちづくり検討会では、令和5年2月、山本景市長同行でJR亀岡駅前まちづくり(全18ha、総事業費90億円、施工:清水建設)を見学した。二国に相当する古来からの流通路が保津川で、その後方に丹波富士(636m)がそびえている。立派な京都サンガの貴賓室で説明を受け感銘を受けた。亀岡も参考にして、本年4月の総会で採択されたまちづくり構想図は図2の通り。

図2:JR学研都市線交野新駅誘致のまちづくり構想図
図2:JR学研都市線交野新駅誘致のまちづくり構想図

3.交野は三大古都の中間点、要衝の地

 

交野市は唯一無二の都市である。日本の三大古都のど真ん中にある。

奈良時代から1000年間、京都と大阪をつなぐ文明と流通の大動脈は淀川だった。そして、枚方はその中間点として栄えた。

 

しかし、平成22年ここに第二京阪道路ができたため、流通経路は北の淀川地区から南方の第二京阪へシフトした。淀川は今や稀に遊覧船が通るだけとなった。

 

京都大阪間の重要な拠点は、淀川べりの枚方から二国沿道の交野市寺・向井田地区にパラダイムシフトしたのだ。(図3)

図3:交野市の地政学的位置と向井田
図3:交野市の地政学的位置と向井田

交野市は京都と大阪の中間に位置し、そこを幅80mの高速道路が通っている。京都、大阪の都心部まで車で約20分で行くことができ、大阪府東部地区の中核都市となるポテンシャルを秘めている。

 

また、新幹線の新駅が松井山手にできる予定となっており、本地区から快速10分で新幹線の駅に行くことができるようになる。鉄道においても、交野市は全国の新幹線網の中核に位置することになる。

 

加えて、寺・向井田地区は河内平野から古都奈良への最短ルートであった。寺地区の住吉神社からかいがけの道を登ると、約30分で奈良県の榜示(ほうじ)地区に着く。戦国武将はこのかいがけの道を馬で駆け上がり、奈良へ向かった。寺・向井田地区は地政学的にも要衝の地であったのだ。

 

山本景交野市長は、令和5年2月の施政方針演説で次のように述べている。

 

「北河内は、JR学研都市線と第二京阪国道とで挟まれたエリアで新たな賑わいが形成されると考えます。交野市は第二京阪国道が市域の中心を通り、学研都市線の快速停車駅が2つもあります。そして、交野市の活気も、第二京阪国道とJR学研都市線とで挟まれたエリアに広がっていくと考えます。そうした中、JR学研都市線に交野市内3つ目の駅を誘致することは、交野市の成長戦略に欠かせないことと考えます。」

 

この稿の執筆者岡市敏治は、本年5月『ヨーロッパの孫に聞かせる日本と世界の歴史』完結編を出版した。その第27話は「森を出た人類のまちづくりの物語」で、現代のまちづくりについても論じている。このコスモホームページに掲載しているので、合わせてお読み下さい。

岡市敏治