2017.2.7

 

トランプ大統領と三権分立

~超大国アメリカの理想と現実~

 トランプ氏は実業家として不動産事業に成功し、大富豪となった「アメリカン・ドリーム」の体現者である。そして、暴言や失言、数々のスキャンダルもおかまいなしで、大方の予想を裏切って大統領選を勝ち抜き、世界最強の軍事・経済大国のリーダーとなった。

 「アメリカは自国の産業を犠牲にして、外国の産業を豊かにしてきた。」これからは「アメリカ第一」America Firstだとトランプ氏は大統領就任演説で宣言する。「自国の国民をまず裕福にする。そのために私は行動する」と。

 国益優先、これはまっとうな考えだ。国益を第一にしない国などありえない。

 アパラチア山脈を越えたアメリカ中央部の工業地帯は錆びついて失業者があふれ、白人貧困層が増大しているのだ。彼らの熱烈な支援を受けて、トランプ大統領が誕生した。

 トランプ大統領は矢継ぎ早に大統領令を発令した。メキシコとの国境に壁を建設する。イスラム系難民らの入国を禁止する。米国以外に産業拠点を移転する企業には「高い関税をかけるぞ」と威嚇し、非難する。そしてアメリカに雇用と安全を取り戻し、再びアメリカを強くて豊かな国、誇り高い偉大な国にするという。しかしそれは「アメリカ・ファースト」という名の強者の驕り、保護主義、孤立主義、独善への道ではないのか。

 

メイフラワー号宗教難民による建国

 今から400年前の1620年、イギリスでの宗教弾圧から逃れて、メイフラワー号に乗ってやってきた102人の難民(ピルグリム・ファーザーズ)によってアメリカは建国された。そしてそれからおよそ150年後の1776年、宗主国イギリスの非道、不正義に対しアメリカは高らかに独立宣言を発する。

 「すべての人間は生まれながらに平等であり、一定の犯すことのできない権利~生命、自由そして幸福の追求~が与えられている。」

 アメリカはイギリスとの独立戦争を勝ち抜き、世界史上初の共和制の近代国家としてスタートする。今から240年前のことで、当時のアメリカの人口は250万人だった。

 以後アメリカは世界中から移民、難民を受け入れ、その人たちとその子孫の勤勉と努力によって、今や人口3.2億人の経済、軍事いずれも最強の超大国となった。

 

病める超大国・トランプの力戦

 とはいえ、無制限の移民、難民の受け入れはもはや不可能になってきた。まずは今いるアメリカ人の生活向上と安全が第一だ。ここにトランプ大統領のブルドーザーのような腕力が期待されることになった。

 ところで、アメリカが「誇り高い国」「偉大な星条旗」として世界中の人々から尊敬されてきたのは、アメリカ独立宣言の理念を継承した『アメリカ合衆国憲法』にある。

 憲法は正義の樹立と自由の確保を目的として、信教・言論・出版・集会の自由などの基本的人権(権利章典)を定めている。

 さらに特筆すべきは、「立法」「行政」「司法」の三権分立である。これは民主政治の基本をなす形態として、世界のモデルになっている。

 だが病める超大国アメリカは、理想憲法だけではメシをくっていけない。なりふり構わぬトランプ大統領の辣腕に期待せざるをえないのだ。エスタブリッシュメントをぶち壊し、この巨大な国を突き動かそうとすれば、誰かが猪突猛進でもしなければ、既得権益層は微動だにしないだろう。トランプさんがんばれ!

 

 そして、世界はなにもトランプ大統領の言動に一喜一憂することはないであろう。アメリカは三権分立の世界に冠たる先進国だ。行政が暴走すれば、違憲審査権を持った司法が立ち上がる。立法の府の議会も黙っていないだろう。現にイスラム系住民入国禁止問題で、司法が機能し始めたではないか。自由と寛容の理想国家アメリカの伝統は不滅である。トランプの辣腕とともに、オバマの理想の松明(たいまつ)はこれからもうけつがれていくであろう。